最後方からみえる世界

GKを分析的にみる

GK詳細分析「クロスボールに対して積極的なポジションを取ること」

 GKにとって、クロスボールの処理はスペースディフェンスに分類される。つまり、処理できなくても直接的に失点につながることはない。しかし、守れるスペースが小さいとその分相手に侵入を許すことになり、結果として失点の可能性を高めてしまう。

 

逆にいえば、クロスボールに出られるエリアが広ければそれだけ未然にピンチの芽を摘み取る事ができ、自チームにとって大きなメリットとなる。さらにクロスボールをキャッチできれば、速攻の機会に繋がる可能性が極めて高い。クロスボール処理は攻守両面において重要な意味を持つのである。

 

 

 クロスボール処理の肝は「危険なエリアを素早く察知する」事である。相手がどのエリアに飛び込んでくるか、複数の相手がいるならどのエリアを優先して守るか。そうした情報を目に入れ、認知判断し、ポジショニングを決める。
 また、ボールホルダーの状況もポジショニングを決定するときの重要な判断要素である。どんな侵入角度か、目線は上がっているかもしくはボールを見ているか、プレッシャーの掛かり方はどうか、利き足はどちらか、など。

 

 そうした判断要素をもとにどのエリアにボールがくるか予測する。エリアの分類は主に、ニア、中央、ファーの3つである。下の図では順にゾーン1〜3で示している。

f:id:wan19wan19wan:20181102205721j:plain

 それでは具体的に見ていく。テアシュテーゲンのスペースディフェンス。

f:id:wan19wan19wan:20181102210157j:plain

 


 クロスが送り込まれる瞬間、テアシュテーゲンはゴールから2歩離れ、ニアに位置している。ゴールに飛び込んでくるのは1人。中央やファーではなく、ニアを優先した理由は単純明快。ボールが一番早く届くエリアがニアゾーンだからだ。中央やファーにボールが届くには時間がかかり、そうなれば体勢を立て直せる。一方でニアは準備の時間が一番少なく、シュートを打たれると厳しい状況が生まれやすい。なので、最近ではニアを最優先にしたポジショニングを明確にするGKが増えている。
 ボールホルダーの侵入角度はゴールラインに対して垂直、よってシュートを打たれる可能性は極めて低い。さらに目線が下がっているので、クロスボールだと予測しやすい。

 

 結果、ニアに走り込んできた相手と争う形でテアシュテーゲンが競り合い、ボールは枠を外れた。


ひとりごと
 クロッサーがゴール方向へ侵入してきたならもう少しニアポストに寄りつつも、グラウンダーのクロスに対してアタックできる姿勢を保つこと。