最後方からみえる世界

GKを分析的にみる

「ケパ・アリサバラガとサッリボール」②

 今回は攻撃面での貢献、特にビルドアップにおけるケパのプレーをみていく。

 

 GKが味方オフェンスのプレーに貢献するのは主に2つの場面。

1. ディストリビューション

2. パス&サポート

 ディストリビューションはGKがキャッチした後に味方へボールを繋げるプレー、パス&サポートはフィールドプレーヤーのパス交換に関与するプレーである。どちらのプレーにおいてもGKには両足でボールを扱い、正確に味方へボールを供給するプレーが求められる。

 

 今季監督に就任したマウリツィオ・サッリは、ボール保持時にもGKに大きな役割を与える。後方から攻撃を組み立てていくときの基準となるプレーは特に重要で、GKには両足でボールを扱う技術や認知・判断能力が要求されている。

 

 GKが両足でボールを扱える恩恵は、容易にプレス回避できることにある。GKからのショートパスのコースは常に3つ用意されており、相手に的を絞らせない。

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 また、SBはそれほど高い位置を取らない(ビルドアップ時はアンカーと同列に構える)ことで、GKからのミドルパスも比較的供給しやすい構造になっている。

 

 そして、ケパの特徴はミドルパスの正確性にあると考えている。

 

 特にリバプール戦ではその効果を発揮した。CFがジョルジーニョへのパスコースを封じ、両WGがCBにマークした時、一番安全で確実にボールを供給できるエリアはSBだ。そこへ正確にミドルパスを入れるケパ。

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狙ったエリアへ正確に供給することで相手の1stプレスラインを剥がし、そしてチームにその後の展開に余裕を与える。チェルシーの攻撃の起点となるミドルパスを供給できるのがケパなのである。

 

 

ひとりごと

 実はひとつ懸念していることがあって、それは「相手にオールコートマンツーマンを敷かれたときどうなってしまうのか」である。ハダーズフィールドマンチェスターシティ相手に敷いた守備組織だ。その時は、エデルソンがゴールキックを相手最終ラインの裏に蹴り込んでアグエロが得点を決めたことで、先制することができた。しかしケパには、フィードの正確性こそあれど、エデルソンやアリソンのようなパンチ力はない。そうした状況に直面した時に、チェルシーはどう振る舞うのか。懸念すると同時に楽しみである。

 

参考文献:「サッリ・マニア」のコーチが解く、チェルシー新監督のゲームモデル | footballista https://www.footballista.jp/review/49562